「人はどう老いるのか」を読んでみた

夫婦 読んだ本

著者の 久坂部 羊(くさかべ よう)氏は医師で小説家、推理作家である

著者は医師としての経験を生かし医療小説を多く執筆しており、その作品は医療界の闇に斬り込む内容で知られている

彼の作品は、医療現場のリアリティと社会問題を描き出すことで高い評価を受けている

年を取ってから特に多い病気の認知症とがんについて、医療者の立場からこれまでの事例をもとにいろいろと解説している

いつまでも元気で長生きは幻想かも

先日、新聞のチラシに化粧品の広告が入っていた
その文言が

「ひと塗りで、83歳の母のハリが」

オイオイ、いくら何でも83歳!!
まあ広告にはハリが生まれるとかそんなことは書いてない
当然だ
小さい字で「本人の感想です」はお決まりだ

確かにいつまでも若く美しくありたいと誰も思うだろう
だが闇雲にアンチエイジングなどに走ってしまうととんでもないことになってしまうと思うのは、私だけだろうか
83歳で美しいとなると相当の投資が必要になると思うのだが

著者は肉体的、精神的な衰え、病気との戦い
それが老いるという事だと

それが長生きすることなのに、なぜ皆さんそんなに長生きしたいのかと

私も思う

健康で100歳まで生きられ、最期に老衰で枯れるように亡くなれば幸せだろう

でもほとんど人がそうではないようだ

ほのかなロマンス

デイサービスでの話しだ

Nさん(90歳・女性)は童女のような人で、会話も無邪気そのものでした。(中略)

このNさんに、どうしたわけか車椅子で目も耳も不自由なMさんが好意を持ち( 顔が見えなくてもフィーリングでわかるのでしょう) 、 Nさんもまんざらでもないようで、 二人を同じテーブルに並べると、 いい感じですごしていました。

あるとき、Mさんが遂に意を決したらしく、 Nさんへのプレゼントを持ってデイケアに来ました。ところが折悪く、その日、 Nさんは体調不良で欠席し、次の出席予定日も来ませんでした。

Mさんは再会の日を心待ちにしていましたが、Nさんは残念ながらそのままデイケアに来ることなく、ご自宅で亡くなりました。 Mさんにはもちろんそのことは伝えませんでしたが、何かを感じるのは、はたまた年齢のなせる業か、徐々に食欲をなくし、入院したかと思うと、まるでNさんの後を追うように亡くなりました。

人はどう老いるのかより

目が見えなくても、耳が聞こえなくても恋をすることができるというのはとても素敵だと思う

だが、素敵だと思うのは本を読んだ読者で、NさんはMさんのプレゼントを受け取ることはなく、Mさんは寂しい気持ちでいらしたと思うと泣けて泣けて

本当に最後の最後まで人生はいろいろだと

重度の認知症の妻と介護する夫の話

連れ合いのある人は、相手が先に認知症になることを忘れてはいけないと先生は指摘する
それを考えずにいた74歳の夫と、重度の認知症になっている72 歳の妻の話だ

妻は重度の認知症で在宅医療の依頼が先生に来た
先生が訪ねたときインターホンにもなかなか応答がなく、出てきた夫はとても不機嫌であった
夫はテレビゲームの最中だったようだ

そして先生とのやり取りの中、こうほざいたのだ

「まったく厄介ですよ。私は長年、家族のために働いてきて、年を取ったら家内に世話になろうと思っていたのに、このザマですからな」

何なんだ!この夫は!
そんな気持ちだから奥さんが重度の認知症になったんじゃないの!
怒りでわなわなと震えが来たとはこのことだ
いきなり重度の認知症になる人などいない
父の介護で経験したので、それはわかる
徐々におかしいなって気づくのだ

家族のために働いてきたのは妻も一緒だ
妻が家を守ってきたからこそ、夫は外で働くことができる
お互い様なのだ
それが妻への感謝もなく、年を取ったら世話になろうなどと
確かに私より少し上の世代の人の話ではある
男性が家事をするなど考えられないのだろう
しかし妻への虐待から殺人にまで発展しかねないほどの状況になっていた
詳しくは本書で確認してもらいたい

それまで夫は他人の世話になりたくないと頑なに拒んでいたが、ヘルパーの派遣とデイサービスの開始を先生が決めた
当然だ

そしてこのことはいい方向へ変わっていった

夫は介護を仕事のように捉え、いろいろと上手に出来るようになっていった
もちろんケアマネージャーの指導のもと

それで奥さんの状況も落ち着いてきた
またよかったことは夫も、奥さんに色々と若い時に心配かけたり、苦労をかけたことを認識するようになっていった

著者は認知症の介護を始めるなら、認知症の人が起こすトラブルをできるだけたくさん、できるだけ最悪なものを想定内にして心の準備をすることだといいます
私の父の介護は結局は入院という形になり、本にあるような壮絶な介護は経験していません

しかし、まだいました「夫」が
もしかしたら介護することがあるかもしれないので、予備知識があるというのはとてもいいことだと思う
だけど反対の場合もあるな(笑)

まとめ

先生は癌をはじめ終末医療のことや「胃ろう」のことについてもいろいろと解説されています

私の母は「ASL」という難病になり、終末期に「胃ろう」という選択をしました
この事は今でも後悔しています

そのことが思い出されて、あー、あの時にこの本に出会っていればと思いもしましたが、知らないこともたくさんあり、とても勉強になりました

また、医師の本音なども書いてあり、面白く読むこともできますよ

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to be continued by hana

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